名古屋の通知表のお話


絶対評価の通知表とは?

 小学生が家庭へ持って帰ってくる通知表は、絶対評価になっている。これは個人の変化・発達を測定し、価値づけをする評定方法で、クラスの中で他の子と比較してどうかという相対評価とは根本的にちがう。お母さんたちは、このことを十分理解しているだろうか。

 平成元年に改訂された小学校の学習指導要領は、平成四年度から実施された。当初は多少の混乱もあったようだが、いまでは学校も父母も慣れ、名古屋市の教育委員会によれば、さしたる問題も起こっていないようだ。しかし、中一年生の一学期の通知表を見て、慌てて学習塾に駆け込む例が少なからずあることから考えると、お母さんたちが現状における絶対評価を正しく理解しているかどうかは疑問だ。

 

絶対評価とは

 平成三年度まで、小学校の通知表は各学期ごとに五段階に評定されていた。これは相対評価で、五がクラスの中で何人というように決められていて、学力の順位がはっきりしていた。ところが平成四年度から実施された新学習指導要領では、一人ひとりを大切にした教育の推進という考え方が基本になり三年生までは◎○△の評価のみになり、四年生から各学期末の評価に加え、三学期末のみにA・B・Cの評定が出されるようになった。

 問題はお母さんたちが、自分の子供のころの相対評価のイメージをそのまま持っていて、Aが付いていれば五もしくは四だと錯覚している場合が多いことだ。

 絶対評価ではA・B・Cそれぞれの人数は決められていない。そこで、教師の裁量によって、クラス全員がAだという評定もありうる。しかし中学校では従来の相対評価の通知表なので、五段階評価の三でしかないという現実にショックを受ける親子も少ないという現象が起こる。ここで実際の学力を知り、塾に駆け込むという訳だ。しかし勉強は積み重ねであり、塾に入ったからといって急に成績がアップするわけではない。「小学校でつまずいたとき、早めに指導を受けていたら…」と、塾の先生は、今の曖昧な小学校の通知表に疑問を投げかけている。

 

学習指導要領

 学校教育は、子供たち一人ひとりの望ましい成長を願って行われるもので、全国のどの学校においても具体的に実現し、一定の教育水準を確保するため、教育課程の基準として学習指導要領が定められている。この学習指導要領に沿って、全国の学校で教育活動が行われている。

具体的には次の四つの方針に基づき各教科等の内容や授業時数等が決められている。

 1.心豊かな人間の育成
 2.基礎・基本の重視と個性教育の推進
 3.自己教育力の育成
 4.文化と伝統の尊重と国際理解の推進

 このような学習指導要領の趣旨の実現を目指し、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、一人ひとりの個性を生かす教育の充実に向けた努力が進められている。

 

評価のしかた

 学習指導要領に沿って、全国の学校で教育活動が行われていることは先に述べた。その学習成果を一人ひとり評価する通知表は、個々の学校に任されている。

 名古屋市教育委員会の見解では、学習項目ごとに観点評価が行われ、「理解度がおおむね満足」と教師が判断すれば◎が付けられる。日々の努力はもちろん評価の目安になるが、あくまで学習の到達度なので、その子が努力しても理解度が低いとなると○もしくは△となる。ある塾では、「△が付いていたら黄色ではなく赤信号」と思ったほうがよいとお母さんに注意を促している。平成四年度から実施された観点別評価は軌道に乗り、現在は学校週五日制の完全実施へと視点が移っている。過去の話題となりつつある絶対評価の意味を、お母さんはいま一度考えてみてほしい。

 


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