徒然日記その314.  大学入試 低学力でも得点できるセンター試験 (6/6)

 

2004年の朝日新聞の記事。「大学入試センター試験の数学問題では「数学力」を十分に判定できない」という見出しで次のようなことが出ていた。(オリジナル記事は消えているので、スクラップしているページをリンク:見やすいように、改行位置を変えました)

 

 大学入試センター試験の数学問題では「数学力」を十分に判定できない――。日本数学会理事長の森田康夫・東北大教授が、同大の2次試験との比較からそんな分析結果をまとめた。「計算力」があれば点を稼げるセンター試験の特質が背景にあるとみられ、30日、入試数学を検討する専門家の集会で報告し、改善を訴える。

 02年から今年まで3回の入試を対象に、主に理学部志願者のセンター試験と大学独自の2次試験の各教科成績を調べた。外国語などはセンター得点が高ければ2次得点も高いという相関が表れるのに対し、数学ではそれが極めて弱かった。

 今年の前期日程試験で見ると、センター試験の数学(1)(主に数学1・A)では理学部受験生約600人の約30%が満点の100点だったが、2次試験(300点満点)になると、センター満点組が260点前後から40点台まで分散し、4人に1人の割合で平均を下回った。センター試験80〜90点台でも同様の分布を示した。数学(2)(主に数学2・B)でも、全体的に2次試験との相関は弱かった。

 センター試験が空欄を埋めるマーク式で広い範囲の基礎的な知識を測るのに対し、2次試験は記述問題で論理的に深く考える能力を試す。

 森田教授は、02年、03年の試験でも同じ傾向が出ていると話す。センター試験の高得点者が多い一部の国立大の入試担当者の間で指摘されていたが、データで裏付けられた形だ。

 (1)平易な問題で平均点を60点程度にする制約から、計算量の多い問題を出している(2)計算力は学習で伸びるため、数学的思考力がそれほど高くなくても高得点を取れる、といったセンター試験の事情が背景にあるという。

 森田教授は「前身の共通1次試験に比べ計算量が増え、数学者でも時間内に全部解くのは難しい。高校ではこれに対応して計算練習が過度に重視されるようになった。難易度が多様な問題を出す一方で、計算量を減らすなど出題方針を改めるべきだ」と話す。

 

要するに、数学的思考力が十分なくても、ワンパターン計算力を要求するセンター試験では、計算トレーニングだけで高得点できるということだ。計算力は数学力の一面ともいえるが、数学的思考力こそが数学の本質的な学力のはず。

センター試験は文系も含めた全受験生を対象としていて、なおかつ、平均点を60%あたりにもってこないといけないし、さらに、出題形式はマークシート方式でなければならない、という宿命をもつ。だから、センター試験だけで数学力を全て試すことは不可能である。これは仕方ない。だから、国公立大学ならば、大学ごとの二次試験でこの力を試しているのだ。

 

前置きが長くなったが、言いたいことは次のことなのである。二次試験に数学を課さない国公立の大学・学部があることなのだ。私立大学にしてもそう。私立大学の入試は色々あるが、なかでも「センター出願」は、センター試験の結果だけで合否が決まる。つまり数学の試験はセンター試験だけなのだ。理系の学部でもこれはかわらない。

受験生は、受験で出題されなければ勉強しない。だから、センター試験用の数学しか勉強しないのである。そんなことで大学に入っても、受ける講義はチンプンカンプンなのである。これは受験生が悪いんじゃなくて大学が悪い。志願者を集めるために安直に受験教科をへらし続けたのがいけないのである。

「重量入試」「軽量入試」というコトバまでできた。受験教科・科目数が多いのが「重量入試」で、少ないのが「軽量入試」である。そして多くの大学が「軽量入試」を採用しているのだ。大学もわかっているけれど、自分で自分の首を絞めているのである。そうしないと学生が集まらず、大学として存続できないからだ。一番悪いのは、少子化がわかっているのにこんなに大学を増やした文部科学省である。例によって、役人は責任なんかとらないのだけどね。いやはや。


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